(JP) The Tokyo Art Book Fair ディレクター中島佑介に訊く「Steidl Book Award Japan」について

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8月末に応募作品がすべて揃った [Steidl Book Award Japan]。The Tokyo Art Book Fair 2016 の会場では、応募された作品から150点を並べる、特別展示を開催します。展示と審査に先立ち、すべての応募作品を閲覧したブックフェアメンバーを代表して、ディレクターである中島佑介に話を聞きました。

 

ーー最終的には何件のノミネートがありましたか?

 8/10までのエントリーで予想を大幅に上回る約700件以上のお申込をいただきました。受付締切後すぐに、全ての応募作品の表紙を撮影し、選考に先立ってゲルハルト氏とSteidl社に送りました。Steidl社からは「こんなにたくさんの応募があるとは思いもしなかった」という驚嘆と「とても有望な作品が集まっていそうだ」と応募作品に対する期待の言葉をいただいています。

 

ーー予想を超えた応募数が集まった要因は何だと思いますか?

 ひとつは2012年に公開された「世界一美しい本を作る男」を通じてSteidl社とゲルハルト氏を知っている方が多いらっしゃったのは多くの応募をいただいた大きな要因だと思います。

もう一つ、別の理由として考えているのは、アートブックという表現を通じて作品を発表したいと考える価値観が、この数年で浸透していた結果ではないでしょうか。

 実際に届いた作品を先に拝見した際に、独創的なアイデアが反映されたものが多い印象がありました。情報伝達のためのメディアとしての本ではなく、本自体が表現になっているような。

 この価値観の浸透にはこの数年間、世界のブックメイカーが本の可能性を拡張するようなアートブックを精力的に発表してきた成果だと考えています。ゲルハルト氏がアワード設立に寄せてくれた言葉の中にある「アートブックを見るとき、そこに何か新鮮なかたちで示されたアートを見たい」という言葉に応える、優れた作品が集まっていると思います。

 

ーー今回展示作品として選ばれた約150冊の選考基準は、Steidlが選ぶことを考慮した選考なのでしょうか?

 アワードの設立時には、応募数がある一定数を超えた時には、事前審査を行い、通過作品だけを展示/ゲルハルト氏にも見てもらうようなプランでした。しかし、実際にこれだけ多くの作品が集まり、また全ての作品がゲルハルト氏に見てもらうために制作された「熱量」を感じた時、ゲルハルト氏に見てもらうことなく事前に選考してしまうというのが、どうしてもできませんでした。日本で寄せられたアートブックに対する情熱を、ゲルハルト氏にそのまま伝えるのがブックフェアとしてすべきことと判断し、事前の審査は行わず、ブックフェアでは独創性を感じさせる約150冊を展示させていただくことにしました。

 

ーー今回の対象は、ダミーブックと自費出版のアートブックが対象でしたが、比率はどうでしたか?応募作品に特徴はありましたか?

 実際には、自費出版ですでに各作家が製品として仕上げているものが半数、このアワードのために作られたダミーブックの応募が半数くらいだったのではないかと思います。また作家とデザイナーによるチームでの申し込みや、複数の作家で作ったもの、本ならではの共同作業による作品も多くありました。

 世界各国で開催されているブックアワードが写真に特化したものが多いのに対して、今回のブックアワードはすべての表現に開かれたアワードだったこともあり、グラフィックデザイナーによる作品や、テキストとコラージュを組み合わせたもの、ファッションデザイナーによる作品など、多様な表現が寄せられたのも特徴だったと思います。

 

ーー特に印象に残っている作品はありますか?

一般的な本の形をしている作品が応募作品の中心でしたが、中にはいわゆる本の形ではない、オブジェのような作品が印象に残っています。こういった作品の中には、作家がどんなことをやりたいのかというアイデアが凝縮されている、作家の世界観を体現した作品もあり、アイデアを伝えるための手段として本の形をとらない表現というのも、ダミーブックのありかたとして可能性を感じました。

 

ーーブックフェアでの展示に望むことは?

実際に展示をさせていただくのは応募作品の一部ですが、展示作品を通じて、現在の日本におけるアートブックシーンの熱量を来場者の方にも感じてもらえたらと思っています。

また、本アワードに参加してくださっている方々の最終目標はSteidl社から作品集が刊行されることですが、ぜひ国内外の出版に携わる方々にも見ていただき、作家と出版社との出会いの場になることも期待しています。

《展示概要》

Special Exhibition: Steidl Book Award Japan

2016年9月16日(金)〜 19日(月・祝)入場無料

東京都港区北青山1-7-15 

京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス 1F

INTERNATIONAL SECTION内

http://tokyoartbookfair.com/exhibitions/6954/