「Steidl Book Award Japan 2016」滞在制作レポート2

1日目の午後16時頃になり、いよいよゲルハルトとの打ち合わせが設けられました。第一グループで渡独したのは鈴木さんと平野さん。

ダミーブックを応募してから今回の制作までに約二年ほどが経過しているため、二人とも出版したい作品集のページが増えたり、新しいシリーズが加わったりと変更したい箇所がありました。今回の打ち合わせでは変更点も含め、受賞後に初めて制作について話す機会となります。

 

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まず打ち合わせの席に着いたのは鈴木さん。ストリートスナップを作品としていて、力強いイメージとコントラストが特徴的な作品です。ゲルハルトは鈴木さんが持参したプリントと新しいレイアウトをしたPDFを手早くチェック、用意されているデータに関しての基本的な質問をいくつかした後に、担当デザイナーのダンカンに本文データ制作の指示を出します。

 

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続いて平野さん。開発で大規模な工事が行なわれている渋谷の街を撮影した作品を制作しています。今回持参した新しいポートフォリオにはカラーの作品と受賞後に制作を始めた新作が含まれていました。応募されたダミーブックと新しいポートフォリオを見比べながら、担当してくれるデザイナーのホルガーに、平野さんが持参したインデザインデータを出力して、全体を俯瞰できる台割りチェックの準備を指示をします。

 

二人との打ち合わせ時間は全体で約20分、思いがけないほどあっという間でしたが、この無駄のなさがゲルハルトの仕事の仕方を象徴しているのかもしれません。

 

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鈴木さんはダンカンと一緒に印刷用のデータをインデザインで制作していきます。PDFでは写真の周りに黒フチを付けていましたが、ゲルハルトとダンカンからの提案でフチ無しの裁ち落としにすることに。

 

ホルガーは平野さんのインデザインデータを出力、すぐにゲルハルトによるチェックが入ります。台割りをと応募されたダミーブックを見比べながら、真ん中に設けていたカラーのパートをなくし、前半と後半のモノクロ作品のみにするという提案が投げかけられました。図版は白いフチを付けずに裁ち落としにして、後半の新作は絞り込んでスリム化した編集に、最初に入っていたタイトルを一番最後に設けたものを一度確認してみようと助言があり、平野さんの承認を得てホルガーは早速インデザインを編集する作業にとりかかります。

 

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二人のインデザインデータ編集作業がで完了したところで、1日目の作業は終了しました。ゲルハルトの確認用と、作家が宿舎に持ち帰ってチェック用の2部が出力されて、1部を手渡されます。明日はそれぞれにチェックした内容を持ち寄って、さらに編集作業を詰めていくことになりました。

 

二人とも、最初に提出したダミーブックから大きく変更があり、ページ数の変更など制作コストに大きく影響する内容でしたが、ゲルハルトからのネガティブな指摘はなく、あくまで良い本を作るためにすべきことが優先されます。また、作家へ変更を打診するときにも必ず「提案」という言葉が付き添って、作家の判断が最終決定権を持っています。作家の作りたいものを最良のクオリティで作り上げる、その姿勢が初日の打ち合わせからすでに感じられました。

 

 

2日目は朝9時にライブラリーに集合、平野さんは奥付やタイトルの場所についての新しいアイデアをホルガーと相談し、具体的なデザイン案の検討に入りました。

鈴木さんには、編集についての提案が投げかけられました。本文の後半に設けていた写真図版のない黒いページをなくし、最後までノンストップで駆け抜けるような編集にするのはどうか?という提案で、鈴木さんもその考えに同意し、ダンカンが修正の作業に取り掛かります。

 

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Steidlの社内は、ゲストが社内のどこにアクセスしても咎められないオープンな環境になっています。待ち時間に社内を歩き回ってみると、どこも整理整頓され、作業をしているデスクの上にも必要な書類しか置かれていません。確認の都度プリントされる確認用の出力も、改訂した場合には常に古いものをすぐに破棄し、各プロジェクトの書類をまとめたトレイには常に最新の必要書類のみがまとまっています。そのため誰が見ても現状を確認することができます。また、情報は必ず紙で残されているのも特徴です。とてもアナログに見えますが紙での確認は進行状況を感覚的に理解し、共有管理する最適な方法として採用されています。整理整頓と不要なものは残さないルール徹底は、社内での仕事を円滑に進めるための土台になっていました。

 

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