ドイツにおける現代のアートブックシーンを紐解く展示「Doitsu Art Buchmarkt」には、ドイツのアートブックシーンを牽引する5名のキュレーターたちがセレクトしたアートブックやZINEが並びます。ここではキュレーターたちに、それぞれの活動やセレクションについて話を聞いてみます。まず1人目のキュレーターとして、ドイツ・ベルリンを拠点に活躍するStefan Marx(ステファン・マルクス)さんをご紹介します。ステファンさんは、優れた観察力によって日常生活を切り取ったユーモアあふれる知的なドローイングや手書きのタイポグラフィが特徴のアーティストです。彼の作品は、アーティストブックやキャンバス、Tシャツ、レコードカバーなど多様なメディアを通じて広く知られ、世界中の人々を魅了しています。
ー 今回の展示のためにドイツ出身またはドイツで活動する作家によるアートブックを選んでいただきましたが、セレクションのポイントを教えてください。
「Doitsu Art Buchmarkt」のキュレーターとして招待していただきありがとうございます。とても嬉しかったです。今回のセレクションは、好きな本、好きなアーティスト、友人の本、自分が持っている本やZINE、将来欲しいと思っている本など、主観的に選びました。セレクトしたのはどれも新刊で、中にはアーティストが自費出版して限定的に販売されているため、普通は見かけないような書籍もあります。小さい自費出版のZINEから、オブジェとして素晴らしいヘンリケ・ナウマンの新作アーティストブックまで、様々な本を集めました。
ー TABFでは、「Doitsu Art Buckmarkt」の他にステファンさんが2003年から現在に至るまでに刊行したアーティストブックやZINEを一堂に集めた展示「Die Hefte」が開催され、同名の書籍もTABFから刊行します。出版に興味を持ったきっかけとは? またコンスタントに本を作り続けるモチベーションとは何でしょうか?
今年のTABFで、今までに制作したアーティストブックを全点展示できることをとても嬉しく思います。アーカイブから全冊を発掘したり、黒木晃さんと共にZINEを制作するプロセスは楽しかったです。自分のアーティストブックをまとめた本を作ることをずっと夢見ていたので、それをTABFと共同出版できたことを光栄に思います。出版は私が最も愛するアーティスト活動の一つです。一冊一冊がそれぞれのストーリーを秘めていて、この活動は今後もずっと続くでしょう。
ー 2024年9月1日にベルリンで、アートスペース「GROTTO BOOKS」とともに開催した小さなアートブックフェアについて簡単に説明いただけますか? どのような経緯でスタートし、何組くらい参加したのでしょうか? 実際に開催していかがでしたか?
Grotto Booksの考案者は、ベルリンの誰もが好きなハンサヴィアーテル区でアートスペース「GROTTO」を運営するキュレーターのレオニー・ヘルヴェグとアーティストのサイモン・フロインドです。「GROTTO」最寄りの地下鉄駅で彼らに自分の作品を見せたら、「GROTTO」からも近く素敵な「Hansabibliothek」で一緒にアートブックフェアをやらないかと提案されました。そうして「GROTTO BOOKS」が生まれたのです。この1日限りのフェアの第一回が開かれたのは快晴に恵まれた2024年9月1日。招待された17組の出版社やアーティストにはそれぞれ無料のテーブルが提供され、彼らの書籍を使ってキュレーションしたファミリー&フレンドブースも作りました。メインゲストとして迎えたA・A・ブロンソンは自身のアーティストブックとエディションを販売していたし、リバティー・エイドリアンと私は小さな「Liberty Flower Shop」を開きました。ガーデンには音楽プログラムも用意されていて、ピーター・M・ケルステン(またの名をローレンス)やマイケル・サッターが音楽を流してくれたのです。私もブースでフィリップ・エムデのブックサイニングを企画しました。多くの人に来てもらえて大成功でした!来年もまた開催できるよう願っています。
ー ベルリンには多くのアーティストが集まり、そのことがこの街をユニークなものにしてきたと思います。ハンブルグから拠点を移し、新しい拠点となったベルリンとはステファンさんにとってどのような街でしょうか?
ベルリンはとても心地がいいですね。
ー 日本のオーディエンスに向けて一言お願いします。
大好きです!