ドイツにおける現代のアートブックシーンを紐解く展示「Doitsu Art Buchmarkt」には、ドイツのアートブックシーンを牽引する5名のキュレーターたちがセレクトしたアートブックやZINEが並びます。ここでは各キュレーターに選書のポイントやそれぞれの活動について話を伺います。次に、アーティスト、編集者として数多くの本を刊行している傍ら、年に一回ベルリンで開催されるアートブックフェア「MISS READ: The Berlin Art Book Fair & Festival」のディレクターとしても活動するMichalis Pichler(ミハリス・ピヒラー)さんをご紹介します。
ー 今回の展示のためにドイツ出身またはドイツで活動する作家によるアートブックを選んでいただきましたが、セレクションのポイントを教えてください。
ベルリンのブックワークを中心に選びました。ブックワークはアートとしての本、つまり一次情報で、アートについて語る書籍とは別ものです。
ー ミハリスさんがアーティストブックに興味を持つようになったきっかけを教えてください。
アーティストブックについて読む前から近しい分野でアート活動をしていて、2002年頃、自分のコラージュ制作を通してアーティストブックという存在に辿り着きました。書籍や新聞を切り抜く過程で、最初は切り抜いたピースをそのままコラージュしたり、切り抜きかれたページの残部をコラージュに使ったりしていました。最終的には、切り抜きやその残部を出版するようにもなりました。
ー ミハリスさんはアーティストとして自費出版の本も多く出版されてますし、「Doitsu Art Buckmarkt」でも主にアーティストブックをセレクトされました。ドイツのアーティストにとって、本づくりは身近な存在なのでしょうか?
必ずしもドイツのアーティストに限った話じゃないのかと。ただ出版が身近なことは確かですし、素晴らしいエコシステムも確立されています。MISS READ 2024に参加したベルリン拠点の107組、ベルリン外・ドイツ拠点の33組の出展者がそのエコシステムの証です。
ー ベルリンには多くのアーティストが集まり、そのことがこの街をユニークなものにしてきたと思います。ハンブルグから拠点を移し、新しい拠点となったベルリンとはステファンさんにとってどのような街でしょうか?
ベルリンは常に左翼的でした。政党だけでなく、議会外の野党(APO)やアーティストにもその傾向は見られます。私が生まれた時、西ベルリンは壁に囲まれていて、孤島のようでした。またドイツ内で唯一軍が置かれていない地域だったため、それを魅力と感じた多くのアナキストや平和主義者がベルリンに住むようになりました。
ベルリン人であるためにドイツ人である必要はありません。自身や両親のどちらかがドイツ国籍を持たない人たちを「migration background(移住を経験した家族/人)」と呼ぶほどに国際的な都市で、ここに生きる多くの人が分割された、あるいは幾重にも重なるアイデンティティを持っているのです。
ー 日本のオーディエンスに向けて一言お願いします。
興味を持ってくれてありがとうございます。