フランスがアジアに保有する主要なアーティスト・イン・レジデンス施設として、工芸、デジタル・アート、視覚芸術、パフォーミングアーツなどを含む幅広い分野のクリエーターを受け入れているヴィラ九条山は、今年、1992年の創立から30周年を迎えます。ヴィラ九条山は、同施設に滞在したアーティストやクリエイターのプロジェクトを通し、日本の伝統及び現代文化に関わるアーティスト、職人をはじめとしたさまざまな機関との架け橋となり、強い絆を築き上げてきました。その実績から、ヴィラ九条山は、日本においてのみならず、フランスにおいても、日仏両国の交流と創作活動を先導する場として広く知られています。今や世界的に活躍する数多くのレジデントたちに、インスピレーションを与えるとともに、原点に立ち戻り、自らの仕事を見つめ直す機会をヴィラ九条山は提供してきました。

TABFでは、この30年の間にヴィラ九条山に滞在したレジデントたちの、アートブックセレクションとともに、230人近くもの寄稿者によって語られる開館から今までの軌跡を記した記念出版(ガリマール出版社)を紹介。さらに同施設で滞在したまたは滞在中のレジデントアーティストによる展示として、美術家バディ・ダルル(2021年度レジデント)の作品「Ordonator」と、編集者、版画家、美術印刷の専門家セバスチャン=エステバン・デプラ(2021年度レジデント、現在ヴィラ九条山に滞在中)の作品やコラボレーションプロジェクトをフィーチャーします。

 

ヴィラ九条山は、京都市に所在する、フランスのヨーロッパ・外務省の文化機関です。アンスティチュ・フランセ日本の支部の一つとして活動し、主要メセナのベタンクールシュエーラー財団とアンスティチュ・フランセの支援を受けています。

 

アンスティチュ・フランセ日本は、在日フランス大使館直属の文化機関です。2012年9月にフランス大使館文化部と東京日仏学院、横浜日仏学院、関西日仏学館、九州日仏学館が統合して誕生。東京、横浜、関西(京都/大阪)、九州(福岡)、そして2019年からは沖縄(那覇)の5支部(6都市)を拠点に、フランス政府公式機関としてフランス語講座を開講し、フランス発の文化、思想、学問を発信しています。

 

バディ・ダルル / Bady Dalloul

1986年、パリ生まれ。歴史的な出来事、個人的な真実、フィクションを絡めた作品を制作するフランスのマルチメディアアーティスト。彼の作品には、自身の遺産と世界的な移民問題についての社会学的・歴史学的考察が込められています。ドローイング、ビデオ、オブジェを通して、領土の境界線について考察し、西洋を中心とした歴史と知識の形成に問いを投げかけ、ファンタジーと現実の間の対話を創出します。これまでの受賞歴に、パリ政治学院現代美術賞(2016年)、アラブ世界研究所友の会によるアラブ・コンテンポラリー・クリエイション・アワード(2017年)など。2022年、カタールのマトハフ・アラブ近代美術館で個展が予定されています。

これまでに、パリのパレ・ド・トーキョー、グルベンキアン財団、バレンシアのValencia d’Art Modern(IVAM)、アブダビのウェアハウス421などで開催されたグループ展に参加しています。ダルルの作品は、ポンピドゥー・センター、ヴァル=ド=マルヌ県現代美術館、アラブ世界研究所、カディスト・アート・ファウンデーション、イル=ド=フランス地域圏現代美術基金/Le Plateauなどに収蔵されています。

 

セバスチャン=エステバン・デプラ / Sébastien Esteban Desplat

編集者、版画家、美術印刷の専門家。2007年、カンブレ高等美術学院(ESAC)卒業。翌年より工芸の専門施設、メテリー・ブリュイエール・グラフィックアートセンターに勤め、2013年からは企画部門を担当。2012年には、バルセロナのアトリエQuadrat9にて、リトグラフの専門技術を身につけました。2013年より、1973年に設立されたパリのアトリエR.L.Dを引き継ぎ、リトグラフや銅版画と密接に結びついた出版・美術印刷の活動に携わり、現代版画の無限の可能性を追求しています。R.L.Dは現代版画を得意としており、リクエストに応じて技術・手法をカスタマイズすることで、ヴィラ九条山にも滞在したフィリップ・ワイズベッカー(2002年)、二コラ・ド・クレシー(2008年)、ピエール・シャルパン(2012年)、イリス・ド・ムイ(2015年)などを始めとする多くのアーティストたちの創作活動をサポート。また、バンド・デシネとともに出版社3FPJ(3 fois par jour/1日に3度)の編集者も務めています。