LECTURE & SCREENING「TERAYAMA WORLD」

日時:9月21日(月 / 祝) 17:00 – 18:30

会場:Event Space

申込不要・入場無料

出演:沢渡朔(写真家)、森崎偏陸、笹目浩之(テラヤマ・ワールド代表)

協力:テラヤマ・ワールド / マッチアンドカンパニー

 

©Terayama World

©「書見機」1977

 

今年で生誕80周年となり、各所で関連イベントが開催されるなど改めてその作品や活動に注目があつまる「寺山修司」。今も尚多くのクリエイターへ色濃く影響を与え続ける寺山修司の「創造力」に焦点を当てたレクチャーイベントを開催します。

 

寺山修司と直接交流のあったテラヤマ第一世代からゲストを招き、寺山修司が与えた影響、そしてそこからゲストたちはそのメッセージをどのように受けとったのかなどを、現在 "本"、"映像"、"演劇" などの作品を通して触れることが出来る寺山修司の世界観から、ゲストの沢渡朔氏(写真家)が撮影を担当した「トマトケチャップ皇帝」、そしてアートブックフェアという場に合わせてテラヤマ・ワールド代表の笹目氏がセレクトした「書見機」を映像資料として上映しながらお話頂きます。

 

【上映作品解説】

トマトケチャップ皇帝(1971年 / モノクロ調式 / 27分)

トマトケチャップというのは、カゴメでもキャンベルでも構わないが、ともかく農林規格によって製造され、トマト、食酢、糖類、食塩、香辛料を成分とした「トマトケチャップ」- あの血によく似たべっとりとした(しかし実際には甘味のあふるる調味料)である。この作品のタイトルである「トマトケチャップ皇帝」という名はどこから来たのか?なぜ皇帝なのか?等について少々記しておきたい。私たちはこの作品の主人公である一人の小さな権力者の肖像を「トマトケチャップ皇帝」と命名した。シチュエーションは、まずある日突然、宿題をやらないということで父親に殴られた子供が、いつもなら泣いて机に向かうところを、その日に限って振り向きざま父親を刺殺した、あるいは殴り殺したというように設定した。それを合図に国中の抑圧に耐え、管理家庭に服従していた子供たちが一斉に蜂起し始めるのである。もうがまんならない、権力のしつけはごめんだ。すべて親たちは「大人狩り」の対象にするべきだ。われわれに勝手に生きる自由を与えろ、われわれは大人につくられたのではない、むろん大人のための家庭の、半ズボンをはいた家具でもない。われわれはわれわれ自身である。一切の大人は収容し、そして子供に固定観念を与えた大人は、裁判にかけて処刑する。処刑もハリツケから豚に食い殺させるもの、さまざまある。教育の方法も一変させ、性教育と童話とは同じ次元で教えられる。子供による子供のための子供の空想のユートピア、つまりはエロス社会を作る試み。それは大人たちがつくった「国家」という概念に代るに足る幻想の共同体になりうるか?少なくとも玩具箱の中のヒットラーユーゲントくらいになるのではないか。 この作品のテーマである「大人狩り」を政治的言語の不毛性へのアイロニーととるか、空虚なユートピア論ととるかは観客次第だが、この映画は「喜劇」とよぶよりは、むしろ「冗談」のようなものである、といえるだろう。- 寺山修司

 

脚本・監督:寺山修司

撮影:沢渡朔

選曲:寺山修司

編集:臼井高瀬

制作:田中未知

出演:新高恵子、100人の子供たち、アポロ太郎、樺マヤ、小野正子、出前持四郎、網走五郎、他

 

◉ツーロン映画祭審査員特別賞

◉カンヌ映画祭監督週間招待

 

書見機(1977年 / モノクロ調式 / 22分)

この映画は「読書」するという行為を映像化する試みである。 劇団の美術を担当していた小竹信節氏に「書見機」の設計図を注文することから作業は始まった。目から書物までの距離は30センチメートル前後が良いとされるのは本当に正しいことなのだろうか?という人間生理への疑問符から、望遠鏡で本を読んではいけないのか、他の肉体労働を含めた読書行為もあってはいいのではないだろうか、はたまた文字を読むのではなく、文字を数えるという読書行為もあるのではないだろうか。あるいはまた本そのものの文字をならべかえることのできる本があってもいいのではないだろうか。「街は書かれた書物である」とするならば、ビルディングよりも大きな本があってもいいのではないだろうか。紙ではなく鉄で出来た本や、石でできた本があってもいいではないか。読む前に消えてしまう活字やページをめくり終わった後に文字が出てくる本など、読むことを拒否する本があってもいいのではないだろうか。ページをめくる行為とスピードが人間ではなく砂時計に支配される読書方法もあってもいいのではないだろうか。等々、寺山と小竹が読書するという行為と、本の存在理由について思いをめぐらせた映像である。当時劇団のあった麻布付近の寺院や廃墟で撮影されている。「迷宮譚」と同じくハイコントラストフィルムという低感度のフィルムで撮影された作品である。ラストの巨大な書物の文字が消え、人々がワルツを踊るシーンには、「書を捨てよ町へ出よう」というメッセージが見え隠れしているのかもしれない。 - 森崎偏陸

 

脚本・監督:寺山修司

撮影:福元文一

音楽:J・Aシーザー

編集:池田幸子

助監督:森崎偏陸、浅井隆、山崎陽一、清水正法

制作:九条映子、田中未知

出演:新高恵子、サルバドール・タリ、大野進、矢口桃、日野利彦、若松武、根本豊、カトリーヌ、末次章子、市川正、中山孝子、日夏たより、岡部優里

 

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沢渡朔(写真家)

1940年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。ファッション・フォトグラファーとして活躍する傍ら、『カメラ毎日』を初め数々の雑誌で作品を発表。主な作品集に「森の人形館 NADIA」(1973)や「少女アリス」(1973)、「Showa 35 Japan」(2014) などがある。

 

森崎偏陸

1949年兵庫県淡路島生まれ。17才で高校中退、家出。以来、寺山修司に師事。 演劇では音響を主に担当。映画では助監督と記録、写真では紙焼き、新聞・雑誌ではデザインを担当。 現在は主に「演劇実験室・万有引力」、「第三エロチカ」、「演劇集団・池の下」、「唐組」などのポスター、チラシ、デザイン、荒木経惟写真集の編集・デザインを手がけている。パルコ映画「ウンタマギルー」「プ」の助監督、高橋伴明監督「愛の新世界」のタイトルデザインなども担当。ほかに白石加代子「百物語」の音響、日本舞踊の水木佑歌、花柳ゆかしなどの演出、SONYブラックトリニトロン、青山こどもの城、寺山修司記念館のためのビデオ監督作品もある。寺山修司監督作品「ローラ」「審判」「青少年のための映画入門」などでは俳優としても出演し、「ローラ」上映のためにベルリン映画祭、エジンバラ映画祭、台湾映画祭などに参加出演している。寺山修司の母、はつの意向により、寺山修司没後、1991年に元夫人、九篠今日子とともに寺山籍に入る。

 

笹目浩之(テラヤマ・ワールド/ポスターハリス・カンパニー代表)
1963年茨城県出身。1987年に株式会社ポスターハリス・カンパニー設立。90年より演劇・映画祭・イベントの企画・宣伝・プロデュースも多数手がける。94年現代演劇ポスター収集・保存・公開プロジェクトを設立。現在、株式会社テラヤマ・ワールドの代表取締役として、寺山修司の著作権管理及び三沢市寺山修司記念館の指定管理者(2009年から)もつとめる。編著に『ジャパン・アヴァンギャルドーアングラ演劇傑作ポスター100』パルコ出版。著書に、『ポスターを貼って生きた』パルコ出版、『寺山修司とポスター貼りと。』KADOKAWA、ほか。