写真家ホンマタカシによる、エド・ルシェのアーティストブックに対するオマージュシリーズ第9弾『Every Building on the Ginza Street』の展覧会を開催します。
アメリカ出身のルシェが、1960年代から1970年代に写真を用いて制作したアーティストブックは、後世のアーティストや写真家たちに大きな影響を与え、オリジナル作品の形式やタイトルを再解釈やイミテート、パロディー化した多様なオマージュ作品が生まれました。その数は、延べ100冊以上にのぼります。
『Every Building on the Ginza Street』は、ハリウッドの街路「サンセットストリップ」沿いのすべての建物を記録した蛇腹式の写真集『Every Buildingonthe Sunset Strip』(1966年)へのオマージュです。本作とともにたびたび言及される本のひとつとして、1954年に日本で刊行された『銀座界隈』の別冊『アルバム・銀座八丁』が挙げられます。京橋から新橋までを結ぶ中央通り、通称「銀座通り」沿いの両脇を鈴木芳一が撮影した一冊は、テーマやレイアウト、製本までルシェの作品と酷似しています。この本が欧米で知られると「ルシェはこの出版物を見たことがあったのだろうか、真似をしたのだろうか」※という疑問が生まれました。この問いに対して、ルシェ自身は回答を提示していません。
ホンマは、『アルバム・銀座八丁』の舞台となった「銀座通り」を撮影することで、アーティストブックの金字塔への「返歌」を試みました。本展では、ホンマが撮り下ろした『Every Building on the Ginza Street』の制作プロセス、 そしてできあがった写真集とともに、ルシェによる『Every Building on the Sunset Strip』と『アルバム・銀座八丁』も展示いたします。 ※ Martin Parr、Gerry Budger『The Photobook: A History volume 3』(Phaidon、2014年) 152ページより引用。
写真:ホンマタカシ
デザイン:田中義久
出版:POST
協力:SO BOOKS
エド・ルシェ (エドワード・ルシェ、Edward Ruscha, 1937年12月16日 – ) は、アメリカ合衆国の画家、現代美術のアーティスト。1960 年代より、主に言葉 と広告媒体のイメージを用い、コンセプチュアル・アートとしての特徴を持った絵 画、写真、版画、映画などの製作を行っている。(Wikipedia より)
ホンマタカシ 写真家
2011年から2012年にかけて、個展「ニュー・ドキュメンタリー」を日本国内三ヵ所の美術館で開催。著書に『たのしい写真』、近年の作品集に『THE NARCISSISTIC CITY』(MACK)がある。また2018年に『ホンマタカシの換骨奪胎―やってみてわかった!最新映像リテラシー入門―』(新潮社)を刊行。
田中義久
静岡県浜松市生まれ。主な仕事に東京都写真美術館をはじめとした文化施設のVI計画、ブックショップ「POST」、出版社「CASE」の共同経営、「Tokyo Art Book Fair」、「Takeo Paper Show」などのアートディレクションがある。また,飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動。