TABF2023には、北欧5カ国のアートブックシーンを牽引する5名のキーパーソンたちがセレクトしたアーティストブックやZINEが並ぶ4日間限りのブックストア「Nordic Art Book Store」がTABFに登場します。ここでは、キュレーターたちに、それぞれの活動やセレクション、自国のアーティストブックの特徴などについて話を聞いてみます。第一弾を飾るのは、アーティスト活動の傍ら、出版やキュレーション、フェスティバルの企画運営など幅広い活動を通してアーティストブックを広めるデンマークのヨハン・ローゼンムンテ。今回は、自身の出版社「Lodret Vandret」としてもTABFに出展するので、ぜひそちらも訪ねてみて!

 

 

―簡単な自己紹介をお願いします。

 

私は自分のことを、キュレーションや企画を行い、他のアーティストが手がけた作品に関わることも楽しむビジュアルアーティストだと認識しています。私が作る作品の形態は、アーティストブックから彫刻的なインスタレーション、パフォーマンスまでと幅広く、潜在的なエネルギーや時間、考古学といったテーマを扱っています。キュレーションや出版も行う「Lodret Vandretや展示会スペース「New Shelter Planの他、アーティストブックのフェスティバル「One Thousand Booksを立ち上げました。

 

 

―「One Thousand Books」を設立した経緯は? また、なぜフェアではなく、フェスティバルと名付けたのでしょうか?

 

2013年当時、デンマークではアーティストブックが注目されることはあまりなかったので、自分たちでその機会を作ることにしました。アイデアがたくさんあったので、「フェスティバル」という呼び名の方がよりふさわしいと思いました。あと、たくさん本が売れると出版社に期待させたくなかったことも理由の一つです。デンマークの人は、何かに参加すること自体は好きなのですが、必ずしも物をたくさん買うわけではないんです。

 

―スーパーマーケットで始まった(英語にも追記お願いします)「One Thousand Books」は、毎回異なる会場で開催されています。次回(12月1日〜3日)の会場であるO-Overgadenは、どんな場所なのでしょうか?

 

O–Overgadenは、かつて本の印刷所として使われていたことのある美術館です。

 

 

―次回「One Thousand Books」のテーマを教えてください。

 

今年は、「アーティストブックを扱う場所」に焦点を当てます。本というものは比較的に流通しやすいアイテムではありますが、それでも誰かが取り組まないと流通しませんよね。「One Thousand Books」は、これまでの10年間にわたりアーティストブックを広く知ってもらうために尽力してきました。そして今こそ、アーティストブックを実際に広める場所、つまり書店に着目する時だと考えました。アーティストブックを扱う空間は、出版社やアーティスト自身によって運営されていることが多く、本をセレクトし、流通させ、伝える上で重要な役割を担っています。

 

今年の「One Thousand Books」では、O—Overgadenを拠点としながら、来場者に地図を配布し、地元のアーティストブック専門店を巡るガイドツアーを予定しています。より多くの人たちに地元の本屋に足を運んでもらうために、木の枝にふろしきを付けたアイテムを少数限定で制作しました。ふろしきは本を運ぶのにとても便利で、その布には本屋の地図をシルクスクリーンで印刷しています。

 

 

―「Nordic Art Book Store」のためのセレクションの中に、「Space Poetryと「Officin」という出版社から刊行された書籍が複数含まれていましたが、彼らはデンマークのアートブックシーンにおいてどのような存在なのでしょうか?

 

「Officin」は短期的なプロジェクトでしたが、発起人の女性はものすごい熱意を持った方でした。彼女はリソグラフ印刷工房を持っていたので、本作りのプロセス全てをコントロールしていました。一方の「Space Poetryは、とても長い期間取り組まれているプロジェクトで、現在も精力的に活動しています。3名の友人が運営しているのですが、彼らは60代になった今もなお創造力に富み、多くの作品を生み出しています。

 

―今回、「Nordic Art Book Store」のためにデンマークのコンテンポラリーなアーティストブックやZINEをセレクトくださいましたが、自国の特徴は見えてきましたか? そのほかの北欧4カ国との相違点があれば教えてください。

 

デンマークのアーティストブックシーンの特徴には、50年前にポルノが国内で合法化されたことが表れていると思います。デンマークで出版された昔の印刷物の多くからは解放感や、境界を追求する姿勢が感じられるのですが、それはデンマーク人はとてもオープンで自由であり、検閲もなかったことも影響しているのではないかと思います。

 

 

―日本のオーディエンスに向けて一言お願いします!

 

日本に移住しちゃってもいいですか?

 

11月25日(土)17:00-18:15 料金:無料(要当日有効のTABF入場券

Talk Event「Nordic Art Book Store キュレーターズトーク」

https://tokyoartbookfair.com/events/7127/

 

ヨハン・ローゼンムンテも登壇します。ぜひご参加ください。