TABF2023には、北欧5カ国のアートブックシーンを牽引する5名のキーパーソンたちがセレクトしたアーティストブックやZINEが並ぶ4日間限りのブックストア「Nordic Art Book Store」がTABFに登場します。ここではキュレーターたちに、それぞれの活動やセレクション、自国のアーティストブックの特徴などについて話を聞いてみます。フィンランドのキュレーションを担当してくれたのは、フランスと日本で生まれ育った西田ひかりさん。アーティスト活動の傍ら、ヘルシンキでアートブックフェア「The Temporary Bookshelf」も手がけています。今回は「Nordic Art Book Store」のための選書に加えて、TABFのためにフィンランドのクリエイター17名に新規のZINE制作を依頼する「Special Zine collection」プロジェクトも展開してくださいました。

 

―ブックフェア「The Temporary Bookshelf」をヘルシンキで設立した経緯を教えてください。

 

「The Temporary Bookshelf」を始めたきっかけは、ヘルシンキでお気に入りだった書店の閉店でした。女性作家4名から成るコレクティブが運営する非営利ギャラリー「Kosminen」で、インディペンデント出版社「Khaos Publishinng」の主宰者 Iina Eskoが手がけていた書店と涙でお別れした後、その代わりになればと思ってスタートしたんです。

 

 

―今回のセレクトには、自費出版の書籍が多く含まれています。フィンランド人のアーティストにとって、本作りは身近なものなのでしょうか?

 

本作りが人気の傾向にあるのは確かで、そのおかげでアートシーンが活性化しています。新潮流を生み出す要因のひとつは、美大の先生たちが生徒に自費出版を勧めているからだと思います。また出版社が少ないのも理由で、出版はアーティストに委ねられているといえるでしょう。デフォルトの選択肢のように聞こえるかもしれませんが、出版はアートシーンに創造性と実験性なアプローチをもたらしています。

 

―フィンランドの作家17名に声をかけ、それぞれがTABFのために新規でZINEを作る「Special Zine collection」を展開してくださいました。その中には料理人のK0ira1には、アーティストではない方も含まれています。どういった基準で人選したのでしょうか?

 

このプロジェクトでは、キャリアの有無は問わず、フィンランドのカルチャーに影響を与えている人たちにZINEの制作を依頼しました。普段は出版活動をしていない方々なのですが、何かしらの形で出版物に対して感性、あるいは思索的な関心を持っています。彼らの作品を普段とは違う形で紹介することで、フィンランドの出版シーンを活性化することが私の願いです。

 

 

―各キュレーターに、自国のアート出版に影響を与えた重要な書籍も選んでいただきましたが、フィンランドは苦戦していた印象です。その理由を教えていただけますでしょうか?

 

このパートの選書に一番苦戦しました! これは個人的な見解ですが、フィンランドのアートブックシーンが確立されたのが比較的最近だからな気がします。フィンランドの昔のアートブックについて調べてみたら、レファレンスや出典はどれも海外のものでした。今回は「Nordic Art Book Store」のために図書館をリサーチすることで数冊選ばせていただきました。

 

―「Nordic Art Book Store」のためにフィンランドのコンテンポラリーなアーティストブックやZINEをセレクトいただきました。自国の特徴、そのほかの北欧4カ国との相違点とは?

 

自然、有機物、実験的なグラフィックデザイン、フィンランドのモダニスト建築、フィンランドの民話、ポピュラーカルチャーやミームなどをテーマにしたもの、それに加えてマイノリティの歴史や表現に言及するものを多く取り上げました。それらは、私が現代のフィンランドにおいて重要だと考えるトピックです。他の北欧の国に関しては、まずは、「Nordic Art Book Store」に集める本を読んだり、触ったり、見たりすることがとても楽しみです!さまざまなテーマが織り混ざり、新しいつながりを生み出してくれることに期待しています。

 

―日本のオーディエンスに向けて一言お願いします!

 

私はフランスと日本の出身なので、幼少期の夏を過ごした日本はとても身近に感じています。また東京に来れること、このような素晴らしいイベントに関われることがとても嬉しいです。TABFとコラボレーションできたことを光栄に思います。ぜひNordic Art Book Fairに遊びにいらしてください!アートとしての出版、出版としてのアートについてお話ししたいです。

 

11月25日(土)17:00-18:15 料金:無料(要当日有効のTABF入場券

Talk Event「Nordic Art Book Store キュレーターズトーク」

https://tokyoartbookfair.com/events/7127/

 

西田ひかりも登壇します。ぜひご参加ください。