TABF2023には、北欧5カ国のアートブックシーンを牽引する5名のキーパーソンたちがセレクトしたアーティストブックやZINEが並ぶ4日間限りのブックストア「Nordic Art Book Store」がTABFに登場します。ここでは、キュレーターたちに、それぞれの活動やセレクション、自国のアーティストブックの特徴などについて話を聞きます。スウェーデンのキュレーションを手がけたのは、10代で雑誌を創刊し、現在はファッションリサーチ国際図書館のディレクターでも務めるエリス・バイ・オルセン。「Nordic Art Book Store」では、スーツケースを使ったユニークなプレゼンテーションを展開しました。

 

―簡単な自己紹介をお願いします。

 

キュレーション、出版を手がけるほか、ファッションリサーチ国際図書館のディレクターも勤めています。雑誌『Recens Paper』『Wallet』、ノルウェーの詩人 Morten Langelandとともに『Ekstra Utgave』を創刊しました。アート、ファッション、メディア、出版の領域を行き来しながら活動しています。『AnOther Magazine』、ノルウェーの新聞『Klassekampen』で連載を執筆しています。

 

―「ファッションリサーチ国際図書館」を設立した経緯を教えてください。

 

2019年に恩師である故Steven Mark Kleinから約5000冊の本、雑誌、ルックブック、エフェメラを含を預かったのが、ファッションに関する出版物をアーカイブするファッションリサーチ国際図書館の基礎となりました。21世紀の若年層にとっての図書館とは、どのようなものなのか？　どうやったら過去の遺品のストレージ以上の機能以上を持たせられるのか？ このような問いが、プロジェクトをスタートするきっかけでした。ファッションにおいて、アーカイブの保存と持続性がなく次々とを生産する姿勢の間ギャップを感じていました。

 

―様々なプラットフォームを次々に立ち上げる原動力は何ですか？

 

ファッション、アート、メディア、執筆などを手がけていますが、どのプロジェクトも私の延長線にあるもので、独自の創造性と芸術表現を目指して、さまざまなモード、フォーマット、アウトプットを行き来しながら探求してきました。自由であることが好きなんです。常に特定の課題、特定の期間を設けています。プロジェクトの終わりは、始まりと同じくらい重要ですから。

 

―Nordic Art Book Storeでは、9名の作家がスーツケースで本をプレゼンしています。そのアイデアは、どのように浮かんだのですか？

 

ノルウェー人アーティストTerje Nicolaisenのスタジオで、移動型書店のように機能するスーツケースを見せてもらったときにちょうどTOKYO ART BOOK FAIRに招待されたのがきっかけです。その後も複数のアーティストがスーツケースを展示スペースやゲリラ的な図書館として利用しているプロジェクトを見つけたので、スーツケースを使った展示のアイデアを発展させたいと思いました。

 

―展示作品の中にはスライドやイーゼルなど、一般的な本の定義を拡張するようなものも含まれています。アーティストをセレクトする際の基準を教えてください。

 

「Nordic Art Book Store」では、本をさまざまなツールとして用いる9名のアーティストに声をかけました。ノルウェーのアーティストブック出版の多様性を表現したかったのです。これらのアーティストとスーツケースはすべて、今日のアーティストブックとは何か、アーティストブックには何ができるのかという問いを投げかけます。スーツケースは、ミニチュアの書店、箱に入った映画館、ギャラリースペースとも言えるでしょう。

 

―「Nordic Art Book Store」のためにノルウェーのコンテンポラリーなアーティストブックやZINEをセレクトいただきました。自国の特徴、そのほかの北欧4カ国との相違点とは？

 

9名のアーティストたちのアーティストブックというメディアに対する情熱に興奮を覚えます。TABFのために新作を作った作家もいますし、100部限定のエディションや、一点ものの作品もあります。スーツケースをブース・イン・ブースのようにとらえて利用している点も面白いと思います。また、このプロジェクト以外の仕事でも、ファッションに関する印刷物とアーティストブックの類似性をさらに探求したいと思います。

 

―日本のオーディエンスに向けて一言お願いします！

2015年に東京を訪れたことがあるのですが、アーティストブックというメディアを評価する文化が根付き、アーカイブを重要視する日本にまた戻って来ることができて光栄です。たくさんの刺激をもらっています。ありがとうございます！

 

 

11月25日（土）17:00-18:15 料金：無料（要当日有効のTABF入場券）

Talk Event「Nordic Art Book Store キュレーターズトーク」

https://tokyoartbookfair.com/events/7127/

 

エリス・バイ・オルセンも登壇します。ぜひご参加ください。